地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

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matusoka_fumihiko
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一般公開 六ヶ所村GPです。ステップ4に関連して、治療域値を援用しています。簡易式を用いて考えるのですが、治療域値=(NNT/NNH)✖️(プレファランス・H/プレファランス・T)となっていて、患者プレファランス(H;harmに対する嫌悪度を10点満点の何点かで表し、T:treatmentに対する好感度を同様に表す)が重要な因子となっています。しかしこの因子は医師患者関係に左右されるものなので、医師の性格はもちろんその日の体調や患者さんとの親密さで変動します。この避けがたい揺れと責任を感じながら臨床に向かうようにしていますが本当に難しいです。自分という要素が一番手強いですしね。いっそうのご活躍を期待しています。

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bycomet

bycomet

松岡さん、力強いコメント、ありがとうございます。
特に、ご指摘のような治療閾値や揺れと責任はとても興味深い視点で、もう少し伺ってみたいような気がします。

記事では具体的な例を提示しませんでしたから、ある程度の幅をもって読者のみなさんに伝わったと認識していますし、それが狙いでもあります。また同様に、こちらの理解にもまだかなりの幅があるという段階です。

最近、エビデンス(臨床研究による知見)が情報として独り歩きするようになり、個人の臨床決断が情報に惑わされてしまう弊害が目立ってきていると感じます。本来、「エビデンスはさておき、これからどうしますか」という個別のステップ4こそが、EBMの、いや臨床の根幹であると思うのですが、この部分は多様で混沌としており、まだあまり言語化されていません。

一例を挙げてみます。
認知症を心配して、薬の処方を希望する患者さんが来院されたとします。認知症に対する治療や予防として、コリンエステラーゼ阻害薬の効果は乏しく、有害事象が多いことがわかっています。このとき、ステップ4では治療閾値の視点から相談することは、ひとつの方策かもしれません。
この場面で、ぼくは薬を使わない選択肢をまずは提示するでしょう。他にも、例えば園芸療法が有効であるというエビデンスがあれば、それも実践できないか提示してみるかもしれません。
医療以外のアプローチも模索したいと思います。訪問診療などで実際の生活環境を拝見することで、わかることもあります。生活を支援するために、できることはたくさんあるはずです。まずは困っていることをよくお聞きし、地域の資源を生かして何ができるのか個別に相談することからはじめるでしょう。

エビデンスという関心(文脈)にとらわれることによって、ぼくら医療者が医療の文脈から離れられなくなっていることへの危機感を覚えます。EBMの実践は、どの検査や治療を選択するのがよいか判断することでは、決してありません。

この規定の文脈から離れるために、さらにステップ4を探究する必要があると感じています。

ゆっくりですが、前へ進めたいと思います。ありがとうございます。