桜が満開となり、街景色が春めいてきたと思ったら、いつの間にか日中は汗ばむ陽気が続いています。季節はもうすでに初夏といったところでしょうか。ところで、動物では毛の生え替わりのことを換毛と呼び、換毛が起きる季節のことを換毛期と呼びます。換毛の目的は主に体温調節であり、当然ながら気温が上昇する時期に、毛髪量は少なくなります。「毛の生え替わりの季節」という言葉にイメージされるように、人の頭髪量も季節との関連性が示唆されています。
例えば、823例の女性(平均44.3歳)を対象とした症例集積研究【1】では、抜け毛は夏に多く、冬に少ないという結果でした。また、 Googleによる英語圏の検索トピックとして、「hair loss(抜け毛)」の検索傾向を解析した研究【2】では、春と比較して、夏や秋に検索の増加傾向を認めています。ちなみに、この研究で用いられているのはGoogle trends【3】という解析ツールで、誰でも無料で使うことができます。
実際に筆者らは、2013年3月1日~2018年2月28日までにおけるGoogleの日本語検索を対象に、Google Trendsを使用して、春(3〜5月)、夏(6〜8月)、秋(9〜11月)、冬(12〜2月)の各季節における「抜け毛」の検索頻度と季節の関連性を検討したことがあります【4】。その結果、「抜け毛」の検索スコア(0~100で示され、数値が高いほど検索頻度が高い)の中央値[四分位範囲]は、春で32.5[28-40]、夏で50.5[41.3-58.8]、秋で56[50-61]、冬で39[35-45]と、春と比較していずれの季節においても有意に高いことが分かりました(P<0.001【図1】)。特に夏から秋にかけて検索頻度が増えるようですが、この傾向は「薄毛」 「AGA」 「リアップ」 の検索語においても同様に認められました。
【図1】「抜け毛」の検索頻度
むろん、この調査では検索トレンドと季節の関連性を解析しているだけですから、その因果関係を決定づけるものではありません。ただ、抜け毛に関連するGoogleの検索傾向が日本語圏と英語圏で類似していることは、頭髪の状態が人種を問わず身近な健康(あるいは美容)問題として関心が高いことを示唆しています。今回はこれからの季節、悩む方が増えるかもしれない(?)頭髪の抜け毛について、人種的な特徴を整理しつつ、インターネット上で「薄毛に対する魔法の薬」などとうたわれている未承認薬、ミノキシジルの飲み薬(ミノタブ)の有効性や安全性についてもまとめていきます。
【2】Br J Dermatol. 2018 Apr;178(4):978-979. PMID: 29048738
【3】Google trends https://trends.google.co.jp/trends/?geo=JP
【4】日本プライマリ・ケア連合学会学術大会抄録集. 10th (Web):ROMBUNNO.O-148 (WEB ONLY) 2019. J-GLOBAL ID:201902290912342330
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