地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2021年05月号 vol.7(5)

ねこでも読める医学論文 第32話「薬のラベル:ジェネリック医薬品 vs 先発品」

2021年04月24日 17:52 by ph_minimal

はじめに

 今回のテーマは後発医薬品(ジェネリック医薬品)です。政府は2020年9月までにジェネリックの数量ベースの使用率を80%とすることを目標としていましたが、約78.3%とわずかに目標値に届きませんでした[1]

78.3%というとかなり普及してきたという印象ですが、ネガティブなイメージも根強く残っており、先発品をご希望する患者さんもいらっしゃいます。ネガティブなイメージによってノセボ効果が生じる可能性もありそうだなぁ…と思っていたところ、「薬のパッケージのラベルを、先発品の表示とジェネリックの表示で比較してみた」という研究結果が発表されていましたので、今回はこちらを取り上げてみたいと思います。

 

[1]日経DIオンライン「後発品数量シェアは約78.3%、目標届かず新たな目標は2020年度内に設定へ」
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/202012/568104.html

 

ねこでも読める医学論文 第32話「薬のラベル:ジェネリック医薬品 vs 先発品」

 

 

みに丸「ジェネリックの普及が進んでいますが、先発品をご希望する患者さんもいますよね」

はかせ「いるね」

みに丸「オーソライズドジェネリック(AG)なら添加物や製法も同じなので、そういう患者さんにはAGを推奨することもあります」

はかせ「あるね」

みに丸「それでもやっぱり効果が落ちるっていう人もいます」

はかせ「いるね」 

みに丸「実際のとこどうなんでしょうね。生物学的同等性が証明されているので、先発品と効果が同じはずなんですけど、否定的な医療従事者からは『患者さんに投与して効果を検証してない』っていう声を聞くこともあります」

はかせ「なるほど。それでいうと、先発品が新しい剤形(たとえば口の中で溶けるOD錠)を開発するときも、『患者さんに投与して効果を検証する』という手順はとってないと思うけどね。たしか生物学的同等性の証明で承認されてるんじゃなかったっけな?」

みに丸「な~るほど。先発品も剤形変更の際には似たような過程で承認されていると」

はかせ「そこについての不安はないのかね?」

みに丸「ぼくに聞かれても…。ただ、不安を感じているのであればノセボ効果が出てしまいそうな気もします」

はかせ「ありえるね」

みに丸「これまでプラセボ効果についての論文をいくつか読んできましたけど、ジェネリックのノセボ効果について検証した論文ってないんですか?」

はかせ「調べてみようか。Googleで検索してみよう。検索ワードは…、ふーむ…」

みに丸「おっ。またググるんですね。検索ワードは?」

はかせ「ジェネリックのノセボ効果かぁ…。中身は同じで表示だけ『ジェネリック』にすりかえて比較してみればノセボ効果について検証できるような…。じゃあ『generic label randomized ncbi』で検索しよう」

みに丸「『ジェネリック表示』『ランダム化』ってことですね。『ncbi』とは?」

はかせ「ncbiって検索ワードに付け足すと、3000万本以上の論文が掲載されているPubMedという無料の文献検索エンジンに掲載されている論文が引っかかるんだ」

みに丸「なるほど!じゃあググってみて!はやく!」

はかせ「わかったわかった…。ホイッ」

Google検索結果(検索日;2021年2月20日)

 

はかせ「一番上のやつ…、なんかそれっぽいな。2019年の論文か。これを読んでみようか」

みに丸「オッケーです!」

 

The impact of generic labels on the consumption of and adherence to medication: a randomized controlled trial. Eur J Public Health. 2019 Feb 1;29(1):12-17. PMID: 30203031.

 

対象論文はこちらからダウンロードできます。

https://academic.oup.com/eurpub/article/29/1/12/5092917

(論文タイトルの下に「PDF」という表示があるので、ここをクリック!)

ぜひとも論文と照らし合わせながら、ねこ薬剤師たちの論文抄読会にご参加ください。

 

~研究の背景~

はかせ「まずは研究の背景だ。13ページの『Introduction(イントロダクション)』からかいつまもう。『ジェネリックは先発品の特許が切れたあとに市場に出る、低価格の先発医薬品の代替品である。米国や英国ではジェネリックは処方の80%以上を占めているが、ブラジルでは27%である』」

みに丸「ブラジル、使用率が低いっすね!」

はかせ「だね。これはブラジルの研究なんだけど、ジェネリックが普及していないようだ。ちなみに日本は2020年のデータで80%弱だね。ではつづきだ。『ジェネリックに対する否定的な認識は、普及の妨げになっている』」

みに丸「ほう…、否定的な声が多いんですね」

はかせ「『ジェネリックは先発品と生物学的に同等なのに、ジェネリックに対する偏見は依然として強い。品質や安全性が劣ると』」

みに丸「日本でも同じようなところがあるかもですね」

はかせ「『よって、ジェネリックはプラセボ効果が低下したり、ノセボ効果が増強されたりすることで、ジェネリックの有効性にネガティブな影響を与えうる』」

みに丸「うんうん、大いにありえますよね」

はかせ「過去の研究でもラベルを先発品にするのとジェネリックにするのとで比較した研究があったみたいだけど、ジェネリック表示だとノセボ効果が増強したそうだよ。イントロダクションに書いてある。そっちの過去の研究も気になるなぁ」

みに丸「まあまあ、今回はこれを読むと決めたのですから、こちらを読みましょうよ」

はかせ「オッケーだ。『プラセボ効果の低下、ノセボ効果の増強により、アドヒアランス(患者さんが治療内容を理解と実践に積極的で、処方通りにきちんと薬を飲むこと)を低下させ、ジェネリックによる治療の有益性を損なう。アドヒアランスの低下は、入院や死亡率の増加の原因となりうる』」

みに丸「そりゃまずい」

はかせ「まずいね。ただ、ジェネリックだからといって必ずしもアドヒアランスが下がるわけではないようだ。ジェネリックは低コストで入手しやすいので、アドヒアランスが向上する場合もあるだろう。『アドヒアランスに及ぼす影響については相反する報告がある』と書いてあるよ」

みに丸「ジェネリックをつかうと、アドヒアランスが向上したり低下したりっていう報告がでているってことですか」

はかせ「そうらしいよ。ジェネリックは安いから、『薬を節約しよう。今日の服薬は飛ばしちゃおう』みたいなのが減ると思ったんだけども、ノセボ効果によってアドヒアランスが低下する可能性もあるようだ」

みに丸「ふーむ…、たしかに。このあたりは状況によって異なるかもですねぇ」

はかせ「そうだね。イントロダクションには『アドヒアランスに及ぼす影響の因果関係ははっきりしていない』と書いてある。そこで、前向きのランダム化比較試験を実施して、ジェネリックと表示することがアドヒアランスにどのような影響を及ぼすかを検証したってわけだ。有効性についても評価しているけど、あくまで本研究の焦点はラベル表示の違いについての患者の認識や行動だそうだ」

みに丸「なるほど。アドヒアランスがメインかぁ~。まあ有効性も評価しているみたいなので、読み進めてみましょうか!」

はかせ「だな!有効性評価がメインじゃないんだけど、アドヒアランスへの影響も興味があるのでこれを読んでみよう」

 

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