おそらく日本の多くの人が海外の「(積極的)安楽死」に抱いているのは、「終末期で余命いくばくもない人に耐えがたい痛み苦しみがある場合に、せめて最後の救済措置として、本人の自己決定にもとづき医師が毒物を注射する」といったイメージではないだろうか。しかし実態は、そんな想像をはるかに超えたところにある。
2012年春までの主だった出来事や概要は『現代思想』同年6月号と拙著『死の自己決定権のゆくえ―尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』(大月書店)で取りまとめたが、その後も合法化は広がっている。現在、積極的安楽死と医師幇助自殺(PAS: physician-assisted suicide)が共に合法とされているのは、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、コロンビア、カナダ。医師幇助自殺が合法とされているのは、スイスと米国のオレゴン、ワシントン、モンタナ、バーモント、カリフォルニアの5州。カナダとカリフォルニア州の法律がほぼ同時に施行された今年6月は大きな節目となった気がしてならない。米国コロラド州では11月の住民投票が決まり、ニュージャージー州、ミシガン州でも合法化法案が提出されているが、これからドミノ的に合法化が進むことが懸念される。
以上は、『現代思想 10月号 緊急特集=相模原障害者殺傷事件』に寄稿した「事件が『ついに』起こる前に『すでに』起こっていたこと」という拙稿の「安楽死と医師幇助自殺の現状」という項目の冒頭部分です。
こうした合法化の動きが世界同時多発的に加速してきているばかりか、既に合法化された国々でも、なし崩し的な対象者の拡大など、気がかりな現象が近年、急加速の一方なので、拙ブログで日々のニュースを拾っていても、あわただしくて、もういちいちエントリーを立てていられないし、時には一体どこで何が起こっているんだったか頭が混乱してくるほどです。上記の『現代思想』10月号が9月末に刊行になった後にも、大きな動きが次々に報じられています。
読者コメント