はじめに
前回に引き続きインフルエンザをテーマにしました。ワクチン接種に関する論文です。前回が治療薬、今回が予防…。うーん…、順番を逆にしたほうがよかったですね(汗)。12月に入ってからでも予防接種を受けられると思いますので、まだ間に合うかなと思って取り上げました。では早速、ねこ薬剤師たちにバトンタッチ!
ねこでも読める医学論文 第16話「インフルエンザワクチンの間接的な予防効果は?」
みに丸「ねえねえ」
はかせ「上司に向かってなれなれしいヤツだな。白衣の袖を引っ張るんじゃないよ」
みに丸「ぼくはボスの部下でありながら大切なビジネスパートナーじゃないですか。かたいこと言わないでくださいよ」
はかせ「わかったわかった。どうしたんだい?」
みに丸「この前、友達と遊んだときに、インフルエンザの予防接種の話になったんですけど、インフルエンザワクチンなんてたいして効かないんだから打たなくていいっていうんですよ」
はかせ「へぇ~。そっか」
みに丸「『学生のとき、ワクチン打ったのにインフルエンザにかかったから、あんなものは効かないんだ』って」
はかせ「たしかに完璧に予防できるわけじゃないからね。打ちたくないって人の気持ちもわからんではない。保険きかないので自費だしね…。薬局で働いているから毎年ワクチンを打ってもらっているけど、こういう職業じゃなかったら…と思うと絶対に打つという自信はないな…」
みに丸「医療従事者じゃなかったら迷うところかもしれませんが、友達は『ねこ薬科大学』の同級生で、薬局で働いている薬剤師なんですよ。医療従事者は予防接種を受けたほうがいいのではないかと思うんですけど」
はかせ「あっ、同業者なのか…。ガイドラインでは『接種不適当者に該当しない全医療関係者を対象として、インフルエンザHAワクチン0.5mlを毎年1回接種する』と推奨されているね[1]」
みに丸「やっぱそうですよね。インフルエンザの患者さんと接する機会が多いわけですし」
はかせ「うん、それもそうなんだけど、患者さんにうつさないようにするっていう視点も大事かな。医療従事者が予防に努めることで、間接的に患者さんがインフルエンザにかかるのを予防するという側面もある」
みに丸「あ、なるほど。間接的な予防効果もあるんですね」
はかせ「そういう研究も行われているね。論文を読んでみるかい?」
みに丸「読みましょう!」
文献[2]を基に作成
ここからは、論文を手元に置いて、ねこ薬剤師たちと一緒にお楽しみ頂ければと思います。
対象論文はこちらです。
https://www.bmj.com/content/bmj/333/7581/1241.full.pdf
[1]一般社団法人 日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第2版」
[2] Hayward AC, Harling R, Wetten S, et al. Effectiveness of an influenza vaccine programme for care home staff to prevent death, morbidity, and health service use among residents: cluster randomised controlled trial. BMJ. 2006;333(7581):1241.PMID:17142257
~研究の背景~
はかせ「まず、この研究の目的をチェックしよう。1ページの冒頭のアブストラクト(抄録)の『Objective(目的)』を読んでくれ」
みに丸「介護施設の職員に対するインフルエンザの予防接種により、施設入居者を間接的に予防できるかどうかを検証したそうです」
はかせ「そうだ。インフルエンザは他人にうつる感染症なので、入居者の世話をする職員がインフルエンザを予防することで、入居者への感染リスクを減らせるのか?ってことだね。間接的な予防効果について検証したってわけ。では、研究のデザインについてチェックしてみよう」
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