地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2021年07月号 vol.7(7)

ねこでも読める医学論文 第34話「食べる速度を調節するフォークで痩せられる?」

2021年06月26日 20:35 by ph_minimal
2021年06月26日 20:35 by ph_minimal

はじめに

 大変です。体重が増加しています。体重計に乗らなくてもわかるほどに…。私はSNSでは「みに丸」と名乗っていますが、「でぶ丸」に改名しなくてはいけません。これはまずいぞと思っていたところ、地域医療ジャーナルに「早食いは太るのか」というテーマの記事[1]がアップされており、興味深く読ませていただきました。自分もゆっくり食べようかなぁ…。ところで、食べる速度をゆっくりにするという介入研究はあるのかどうかが気になったので調べてみました。

 

[1]地域医療ジャーナル2021年4月号「速食いの人は太るか」
https://cmj.publishers.fm/article/23856/

 

ねこでも読める医学論文 第34話「食べる速度を調節するフォークで痩せられる?」

みに丸「ボス~、なんか最近、ねこ薬局のオーナーが太ってきてません?」

はかせ「しっ!彼はああ見えて気にしているようだ。そのくせ、運動はしないし、好きなもんばかり食っているし、わがまま極まりないよ。楽に痩せるエビデンスを探せ!て催促されてるんだけど、華麗にスルーしている」

みに丸「オーナーを無視するとはさすがボス。ところで、ボスのお腹もぷにょってきて…あいて!ぶったな!またぼくをぶったな!暴力ボスめ!」

はかせ「きみこそ上司のお腹を指でつつくんじゃないよ」

みに丸「だってぷにょぷにょなんだもん。つつかずにはいられませんよ。ところで、ダイエットってやっぱり永遠のテーマですよね。早食いは太るとか言いますけど、実際のところどうなんでしょうね」

はかせ「ふむ…。この記事[1]をみてごらん。早食いの人は太っている人が多い(早食いと肥満と正の相関あり)らしいよ」

みに丸「ほう…」

はかせ「ただ、相関関係なので、因果関係があるかどうかは悩ましいところらしい。早食いだと『おなかいっぱいだぁ~』と自覚する間もなく、バクバク食べてしまい、必要以上に食べる量が増えてしまうので、体重増加のリスクになる可能性があるそうだ」

みに丸「へぇ~。それって介入研究はないんですか?『ゆっくり食べなさい群』と『今まで通り群』みたいな」

はかせ「調べてみるか。PubMed(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/)を開いて、ためしに『Eating Rate weight loss』で検索してみよう。『Article type』というフィルターの『Randomized Controlled Trial』にチェックを入れて…、これで関連ワードに該当するランダム化比較試験があがってくる」(図1)

みに丸「へぇ~、研究デザインで絞り込みができるんですね」

はかせ「そうなんだ。さて、ヒットしたもののなかから目ぼしいものを探してみるか」

 

図1 PubMedの検索画面

みに丸「これなんて、どうですか?『Effects of eating with an augmented fork with vibrotactile feedback on eating rate and body weight: a randomized controlled trial』[2]ですって。なんかそれっぽくないです?」

はかせ「ふむ。食事の速度と体重に及ぼす影響を検証したランダム化比較試験のようだが、augmented fork with vibrotactile feedbackってなんだ?」

みに丸「翻訳すると…、『振動フィードバック付きの拡張型フォーク』」

はかせ「なんかようわからんけど、特殊なフォークを使って食事と体重への影響を検証した研究かぁ~」

みに丸「なんかおもしろそうですね!これを読んでみますか!」

はかせ「そうしよう!」

 

[2] Hermsen S, et al. Effects of eating with an augmented fork with vibrotactile feedback on eating rate and body weight: a randomized controlled trial. Int J Behav Nutr Phys Act. 2019 Oct 22;16(1):90. PMID: 31640791

対象論文はこちらからダウンロードできます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6805487/pdf/12966_2019_Article_857.pdf

ぜひとも論文と照らし合わせながら、ねこ薬剤師たちの論文抄読会にご参加ください。

 

~研究の背景~

はかせ「まずは研究の背景だ。2ページの『Background(背景)』からかいつまむと…。『早食いと肥満には正の相関がある。ゆっくり食べると(lower eating rate)、早期に満腹感が得られ、食事量が少なくなり、摂取カロリーが減るそうだ。早食いの人にペースダウンを促すことが、ダイエットに有望な方法と考えらえる』」

みに丸「なるほど。それ、わかる」

はかせ「『成人の場合は食べるスピードは個人の特性であり、文脈に依存しない』」

みに丸「どゆこと?」

はかせ「状況とかの影響ってよりは個人の習慣ってことかな。ちゃんとした昼休憩の時間が設けられていない薬局だと、いつ患者さんがくるかわからないので、必然的に食べるスピードがアップするかもしれないけどね。こういう場合は文脈に依存して食べるスピードが速くなると言えるんじゃないかな」

みに丸「ああ、そういうことですか。まあ、ねこ薬局は昼の時間はお店を閉局しますから、まったり食べてますけどね」

はかせ「我々、ねこ族は休憩を大事にする種族だからね。さて、続きだ。『習慣的になってるので、食べるスピードを変えるのはちょっとした障壁があるかも。そこで、食べるスピードを変化させるツールとしてセンサーを搭載したフォークがある』」

みに丸「なんですか、そのハイテクフォークは!?」

はかせ「『フォークの使用者が早食いになると(10秒間に1口以上食べると)、フォークの柄の部分に振動が発生して、リアルタイムで早食いをフィードバックし、食事のスピードを落とすように促すことができる』」

みに丸「すげぇ!!」

はかせ「このフォークをつかって、食事のスピードが遅くなるかどうか、そして、体重が減るかどうかを検証したってわけだ」

みに丸「おもしろい!フォークで痩せられたら万々歳だ!」

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