地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2023年3月号 vol.9(3)

財務諸表で読み解く薬剤師業界の現状と未来 ー 第3回:「お金」の流れから見えてくる企業の経営状態と経営戦略

2023年02月23日 14:06 by syuichiao
2023年02月23日 14:06 by syuichiao

 企業の収益や費用は、必ずしも現金で直接的に取引されるわけではありません。クレジット決済を想像すれば分かりやすいと思いますが、売上や支払が発生したタイミングと、実際の現金の流れにはタイムラグが生じます。電気代のような光熱費も、当月の請求金額は前月の使用量に対応しているはずです。薬局で薬を仕入れる場合にも、一定期間内の取引金額をまとめて後払いで清算することが一般的だと思います。ちなみに、このような取引形態を掛取引(かけとりひき)と呼びます。

  掛け取引が発達した現代社会において、企業の売上と費用の計上は、必ずしも現金の流入と流出に裏付けられているわけではありません。つまり、収益と費用の関係性だけを記述した損益計算書からは、現金の流れを正確に把握することができないのです。

  損益計算(収益―費用)上では黒字であるにも関わらず、費用の支払い期限と売り上げ入金のタイムラグから、企業の資金繰りが悪化することもあります(黒字倒産)。企業における実際の現金の流入と流出の関係性はキャッシュ・フローと呼ばれ、一定の規模を有する企業(例えば上場企業等)においては、キャッシュ・フロー計算書の作成が義務付けられています。今回はキャッシュ・フロー計算書の基本的な読み解き方を解説したうえで、アステラス製薬株式会社を例に、キャッシュ・フローから見えてくる企業の経営戦略について考察します。

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