これが記事になる頃にはインフルエンザの流行も収束しつつあるかと思いますが、特に冬は手洗いを励行されることが多いですよね。
手洗いにまつわる歴史ではやはり外せないのがゼンメルワイスだと思いますがこれについては「医療者特集 第7回:医者ってちゃんと手を洗っているの? | 地域医療ジャーナル」[1]でtyabu7973先生が詳しく紹介して下さっているので割愛します。
適切な手指衛生は感染症を予防することが期待されるので、昔から医療の現場では注目されています。
医療関連感染症(HAI)による影響は非常に大きく、毎年アメリカでは約200万人もの人がHAIに罹患し、約9万人が死亡すると推定されていて、HAIによるコストは280億ドル〜450億ドルと言われています[2]。
そのため病院に限らず、施設やクリニックでも様々な感染対策が行われています。
しかし、日本の大学病院・市中病院における手指衛生の遵守率について3545人を対象に調査した調査によると、適切な手指衛生が実践できていたのはわずか19%(医師:15%,看護師:23%)であったと報告されています[3]。
実感としても手指衛生に対する意識や知識、実践は人によってかなり差があるように思います。
患者との直接的な接触回数の多い看護師は手指衛生について研修などで学ぶ機会も比較的あるように感じますが(出来ているかどうかは別問題ですが)、その他の職種は看護師と比して患者さんと直接接触する機会も少ないこともあり意識付けが不十分であることが多いように思います。
手指消毒は付加的なものではなく、必要度でいえば手指消毒そのものが医療行為の一つだと言えそうです。
本稿では手指消毒の基本についてCDC(米国疾病予防管理センター)やWHO(世界保健機構)のガイドラインやその他の関連するエビデンスをまとめ、それに加えてここ最近のエビデンスについても紹介したいと思います。
(「そんなこと今更言われなくても知ってる!!」という諸先輩方の声が聞こえてくるような気がしますので、まぁ手指衛生に関する指導をするときのエビデンスメモとして受け取って頂けたら幸いです)
【目次】
・手指衛生のタイミング
・流水+石鹸による手洗い vs アルコールによる手指消毒
・手指消毒のやり方
・適切な手指消毒剤の量は?
・手袋の有効性と不完全性
・余談①:手指衛生が出来ると何が良い?
・余談②:手指消毒にかける時間は?
・余談③:手袋しながら手指消毒ってどうなの?
・余談④:手指消毒で手がしみる
・手指衛生にまつわる最新のエビデンス
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