地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2022年05月号 vol.8(5)

コロナ禍での医療における高齢者と障害者の権利擁護について、2つの資料を読んでみた

2022年04月27日 04:31 by spitzibara

 

 CMJでは昨年2021年を通して、コロナ禍での面会制限について、人権という視点からずいぶん書かせてもらいました。私は施設入所者の家族として「お世話になっている」立場なので、こうした声は上げにくいのですが、ついスピッツのように後じさりしブルブル震えながらも言わずにいられない、しかもいったん口を開くや辛辣かつストレートなものの言い方になってしまうのが、spitzibaraがspitzibaraである所以(笑)。それでもCMJでは多くの読者の方々に読んでいただき、「深読み」企画でも共感の言葉をもらって、ずいぶん励みと勇気をちょうだいしました。

 その励みと勇気を支えのおかげで、この間、医療や障害児者支援の関係を含め様々な場でお話させてもらう機会があるたび、内心はビビりつつも、面会制限について思い切って発言してきました。おおむね温かく受け止めてくださる方が多く、施設としてすぐに制限の緩和ができるわけではないにせよ、家族の気持ちへの理解を深めたり、対応に工夫をする必要があると気づいてもらえたりすると、やはりお話してよかったと感じてきました。

 ただ、今年に入り、オミクロン株の感染爆発が起こって以来、面会制限について「人権侵害ではないでしょうか」「『こんな時だから仕方がない』で終わるのは思考停止なのでは?」と口にすることは少しずつ憚られる感じになってきました。世の中はすでにコロナ慣れして、すっかり「withコロナ」モードになっている一方で、気がかりは感染者数が減らないこと、死者数が増えていることです。亡くなっているのは基礎疾患のある高齢者だと言われます。そのリスクは、寝たきりのいわゆる重症児者にもそっくり当てはまりますから、重心施設は今年に入って面会制限をより厳しくしています。これまで感染状況の変化に即して柔軟に面会のあり方を見直してきてくれた娘の施設も、今年に入ってからはLINE面会のみのルールを緩和していません。オミクロン株の感染力の強さと、周辺地域での感染者数、入所している人たちの重症化リスクを思うと、さしものspitzibaraも今はしっかり閉めてもらう時期と考えるほかなく、何も言えません。

 けれど、オミクロン株の感染爆発からすでに4か月目。その間ずっとLINEでしか娘に会えないことの辛さは筆舌に尽くしがたく、日々の精神状態を維持するのにも苦労しているのが正直なところです。娘たちは、すでに2年間もろくに家族にも会えず狭い施設に閉じ込められているというのに、この先一体どれだけ閉鎖的で非人間的な生活を強いられるのか。それは数か月単位なのか、もしかしたら年単位になるのか……。それを思うと、いくらなんでもこのままでいいはずがないだろう、そこにはバランスというものがあるだろう、と考えます。そういう問題意識が専門職の議論のどこからも聞こえてこないことに、苛立ちを覚えます。

 面会制限が始まってからの2年あまりで、娘の施設では入所者が少なくとも3人亡くなりました。長く身近で接してきた人たちが、久しく姿も見ないでいるうちに亡くなったと聞いてもどうにもできないことは、悲しくてなりません。また、行事のたびに顔を合わせて親しくお話させてもらっていた高齢の親御さんも、一人亡くなりました。もう会えないことの寂しさに加えて、親たちはそれぞれに自分の年齢を再認識させられては、このままコロナ禍が続けば自分たち親子にもそのような過酷な別れ方がありうるのだと思い知らされ、呆然とする思いです。

 入所の人が亡くなる前には家族は頻繁に面会できたようですし、親御さんのお通夜には娘さんも車いすで出席できたとのこと。施設としては、この状況のなか精いっぱいの対応をしてくださったのだと思います。それでも、どの方にしろ病苦に加えて、2年間もずっと家族と会えない辛苦の中で亡くなったことに変わりはありません。どんなに寂しく、心を残す旅立ちだったことでしょう。

 それでも、医療現場の議論に目を転じれば、「この状況下なんだから、最後に短時間でも会わせてやれば、それで上出来」というところにデフォルト・ラインが落ち着いてきているのでは……と感じることがあります。その無関心を前に、私の胸にはまたぞろ「あのぉ、でもぉ、そこで思考停止されるのも、いかがなものでしょうか……?」と、おずおずとでも口にしてみたい言葉が蠢き始めます。

 新型コロナウイルスがオミクロン株に置き換わってから、面会制限についてはそんな悩ましい思いに翻弄されているspitzibaraですが、最近ちょっとばかりカツを入れてくれる論文と出会いました。International Phychogeriatrics誌(2020)のコメンタリーです。今月は、このコメンタリーと、そこから検索して読んだ米国のコロナ禍における障害者の権利擁護観点からの医療ガイドラインの2つを、簡単にご紹介してみたいと思います。

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