地域医療ジャーナル

2017年11月号 vol.3(11)

9歳未満でもインフルエンザワクチンは1回でもいいですか?

2017年10月23日 02:42 by bycomet

 みなさん、こんにちは。

 先月は特集企画のためお休みした連載「かぜの研究」。今回で第29回となります。早いものですね。

 いよいよ、本格的なかぜのシーズンに突入しています。インフルエンザワクチンも10月から開始していますが、発症者もちらほら。医療従事者はもうお済みでしょうか?

 

返品に罰則つきのワクチン

 さて、例年話題になるワクチン供給情報。今年は厚生労働省から9月15日に出された文書「季節性インフルエンザワクチンの供給について」が話題となりました。まずはこの話題からはじめましょう。

厚生労働省 感染症情報> インフルエンザ(総合ページ)>
関連法令・通知・事務連絡
2017年09月15日 季節性インフルエンザワクチンの供給について

 報道された情報によると、インフルエンザHAワクチンの2017年度製造株は5月時点で別の株が選定されていましたが、増殖効率が著しく悪かったため急遽、A/香港/4801/2014(X-263)に変更。その影響を受け、ワクチンの製造開始が遅れて製造量不足が生じたとみられています。

 この供給不足の見通しを受けての通達となっています。本文をご確認いただくとわかるのですが、要点のみ一部抜粋しておきます。

  • 13 歳以上の者が接種を受ける場合には医師が特に必要と認める場合を除き「1回注射」であることを周知徹底すること
  • 接種シーズン終盤まで在庫ワクチンを抱え、その後返品を行うことは安定供給の妨げになるため、医療機関等においては、返品を前提とした注文及び在庫管理を行わないこと。厚生労働省は、ワクチンの返品状況を把握するため、接種シーズン終盤にワクチンを返品した医療機関等の名称について、関係者への情報提供を前提に情報収集を行う予定であること。また、接 種シーズン終盤にワクチンを返品した医療機関等の名称について、公表することがあること。

 13歳以上の接種は原則1回であること、医療機関は返品を前提とした在庫管理を禁止し返品した医療機関は公表する、この2点であります。

 供給不足になるかもしれないという情報が出てしまうから、医療機関は在庫確保をせざるを得なくなる、という悪循環の側面もあるでしょう。供給側の問題は棚に上げ、使用者側に医療機関名公表という罰則をつけてくる国の威圧的な姿勢には、恐怖心を覚えます。

 

対策は他にある

 さらに、この対策には大いに疑問があります。

 接種推奨を科学的根拠ではなく、供給量で決定してしまっている節が随所に見受けられるからです。おそらくワクチンが少し不足する程度だから、13歳以上は1回、返品禁止で対応しよう、という決断だったのでしょう。

 科学的根拠による判断なら、どの程度の効果や費用対効果が見込まれ、供給量とのバランスで今シーズンは対象者をこのように決定した、という判断根拠が示されているはずです。

 しかし、さきほどのページのように、厚生労働省から出される情報は製薬企業の供給情報ばかり。季節性インフルエンザのページに至っては、平成28年度のままです。

 厚生労働省は国民には目が向かず、供給側にしか目が向いていないことは、もはや隠しようがありません。

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