地域医療ジャーナル

2017年12月号 vol.3(12)

アイスランドではダウン症が「撲滅」された……?

2017年11月28日 10:16 by spitzibara

 10月の特集号の編集後記で、bycometさんは「冷たい医療」を以下の二つの姿勢として要約されていました。

「これが正しいのだから従いなさい」

「検査や治療があるのだからやりなさい」

 私の11月号の記事「『母乳』をめぐる個人的体験」は、上の「これが正しいのだから従いなさい」から連想して書こうと思ったものでした。今回は、下の「検査や治療があるのだからやりなさい」から連想した話題です。

 今年8月、米CBSニュースの番組“On Assignment”が、出生前遺伝子診断でダウン症候群(以下「ダウン症」)をほぼ撲滅したとされるアイスランドの関係者を取材してドキュメンタリーを制作し、世界的な論議を呼びました。CBSNの当該記事はこちらです。

  アイスランドで出生前スクリーニングが導入されたのは2000年代初頭。超音波、血液検査、母親の年齢、遺伝子診断検査を用いる「コンビネーション・テスト」は強制ではないものの、政府はすべての妊婦にこの検査が受けられることを知らせるよう求めています。妊婦さんの80-85%が検査を受け、ダウン症の可能性が高いと出るとほぼ100%が妊娠中絶を選択しているとのこと。アイスランド(人口33万人)では、7割の子どもがLandspitali大学病院で生まれていると記事に書かれていることから考えると、私はこの背景として、出生前診断ユニットを擁するこの大学病院の「文化」も大きな影響力を持っていると言えるのではないかと感じています。記事の中でも、検査を受けた女性が、圧力はなかったが、ほとんどの人が受けていると言われた影響はあった、と語っている下りがあります。

 アイスランド国民ほぼ全員のゲノムをすでに調べたという企業deCODE Geneticsの創設者は「我々の社会からは基本的にダウン症は、まぁほとんど、撲滅された、もうダウン症の子どもはアイスランドにはほぼ一人もいなくなった、というのが私の理解です」

 CBSの記者から「100%の中絶率は、アイスランドの社会の何を物語っているとお考えですか?」と問われた彼の答えは、「比較的強引な遺伝カウンセリングを物語っているでしょう。それが望ましいとは思いませんが……ある意味、医学的な問題とは言えない意思決定に影響を及ぼしているわけですから」「健康な子どもを持ちたいと望むことは何も悪いことではないと思います。ただ、そのゴールを求めてどこまでやるかというのは相当に複雑な決断ですね」

 記事によると、ダウン症胎児の中絶割合は、米国で67%(1995-2011)。フランスで77%(2015)。デンマークが98%(2015)。

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