地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2019年04月号 vol.5(4)

僕らは一体、どれくらい眠れば健康的に過ごすことができるのか?

2019年02月28日 22:20 by syuichiao
2019年02月28日 22:20 by syuichiao

睡眠時間は短すぎても、長すぎても健康に良くないイメージがあります。個人差も大きいと思いますが、皆さんが健康的と思われる睡眠時間はどのくらいでしょうか。

 

睡眠時間と自己報告による健康状態について、24か国の大学生17465人を対象にした横断調査【1】によれば、睡眠時間が7~8時間だった人は回答者の6割を占めていました。やはり7時間程度、というのは標準的な睡眠時間の一つの目安になるかもしれませんね。

 

さて、この研究結果をもう少し詳しく見ていきましょう。各国の平均睡眠時間を比較してみると、アジア諸国では睡眠時間が少ない傾向にあるようです。特に日本では、男性で6.2時間、女性で6.09時間となっており、欧米諸国と比較しても1時間以上短いという結果でした。さらに自己報告による健康状態不良者の割合は男性38.4%、女性45.7%と、全体平均の3~4倍近い数値となっています【表1】。

 

【表1】国別の平均睡眠時間と平均寿命 (参考文献1,2より筆者作成)

 

睡眠不足と感じることは、少なくとも健康状態が良いとは思えない状況といえますけど、この研究でも睡眠時間が短いと、不健康に感じる人の割合は多いことが示されています。健康状態が悪いと回答した人は、7~8時間睡眠者を基準とすると、6~7時間で1.56倍(オッズ比1.56[95%信頼区間1.22~1.99]、6時間未満で約2倍(オッズ比1.99[95%信頼区間1.31~3.03])多いという結果でした。ちなみに8時間以上の長時間睡眠では、有意な増加は見られませんでした。

 

とはいえ、主観的な不健康状態と平均寿命には明確な相関性が見られません。【表1】で、平均寿命【2】と睡不健康と感じる人の割合を見比べてみましょう。睡眠時間が短く、不健康と感じる人が多い日本人の平均寿命は、世界的に見てもトップレベルです。これはどういうことなのでしょう。睡眠時間と健康状態にはあまり関連性が無いのでしょうか。そもそも、僕らは一体、どれくらい眠れば健康的に過ごすことができるのでしょうか。今回は、様々な疫学データを参照しながら、睡眠時間と健康関連問題について考察していきます。

【参考文献】
【1】Arch Intern Med. 2006 Sep 18;166(16):1689-92. PMID: 16983045
【2】厚生労働省:平均寿命の国際比較 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/03.html

 
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