こんにちは。Independent Librarian(インディペンデント ライブラリアン) の chebsat33 です。
この連載では、主に “情報環境のあまり整っていない医療職がEBMを実践する際のヒントとなるようなリソースと活用のコツ” を紹介していく予定です。名付けて『ライブラリアンによるないないづくしのEBM』、略して『LiNE』としてみました。細く縒られた切れやすい糸のように拙い私の文章が、読んでくださる方たちのもとでそれぞれに綴られていき、いつか一枚の布のように何かの時にお役に立つものになったとしたらうれしいです。どうぞ、お付き合いくださいね。
さて。
第4回で、ようやく「文献検索」に関する内容に入りました。今回から数回は、文献検索の基礎のような内容を記していきます。前回、前々回に続き、効率的な文献収集をしている方にとってはご存知のことばかりかもしれません(が、よく考えたらこの連載の内容はすべてそうですね)。そんな方はぜひ、司書が仕事として文献検索をするために準備していることや、実際に文献を検索する際の頭の中をちょっと覗く感覚で読んでいただければと思います。
医学文献とシソーラスと司書
病院などの臨床や医科大学などの教育・研究機関の図書館に勤務する司書の多くは、医療や医学などの主題知識を持たずに入職します。司書として働くことになった途端、自分よりも専門知識を持っている利用者や専門性の高い文献と向き合うことになるわけです。とはいえ、どこで働くことになったとしても、司書は「情報サービスの専門職」です。できるだけ早くお役に立てるよう自己研鑽に努めますし、文献検索や情報整理についてはどのような領域でも応用できるようなことがらをあらかじめ学んでいます。
司書が適切な医学文献を提供できるかどうかを調査した文献もあります。
たとえばこちら。
Quality filtering of the clinical literature by librarians and physicians.
Kuller AB, Wessel CB, Ginn DS, Martin TP.
Bull Med Libr Assoc. 1993 Jan;81(1):38-43.
PMID: 8428187 Free PMC Article
Erratum in: Bull Med Libr Assoc 1993 Apr;81(2):233.
※訂正記事へのリンク(表1「Article title」の%値に誤りあり)
ピッツバーグ大学の医学図書館で、司書3名と医師24名を対象に、文献の選択と選択プロセスについてを調査。双方の選択した文献に大きな違いはなかったが、選択プロセスには共通点と相違点があった。いずれの立場も文献タイトル・抄録・ジャーナルタイトルに着目して文献を選んでいたが、医師は臨床への適用可能性や特定の症例との類似性に、司書は各文献に索引されたシソーラス(Thesaurus)用語に焦点を当てていた、という内容。
この文献では、「司書は臨床家に質の高い文献を提供するためのフィルターとして有用である」「シソーラスや索引の知識は司書の強みとなる」とありました。前者については25年以上前の調査ですから、現在の状況にすっぽりあてはまるということはないと思います。この文献自体についても、被験者の数が少なく、医学文献に精通する司書が対象になっていますから、いくらかを差し引いて考える必要がありそうです。そして、日本の司書への適応となれば、なおさらだと考えます。なぜなら、日本とアメリカでは、司書になるための条件や資格取得のプロセスが大きく異なります(参考:アメリカ図書館協会による司書になりたい人への案内と文部科学省による日本で司書になるための案内)。さらに現在の日本の図書館では非正規や期限付き更新なしの雇用が増え、図書館としても司書個人としても専門性を向上させることがままならない状況が続いているからです。
しかしながら、シソーラスや索引などの主題を整理し表現するための知識が情報サービスの専門職である司書の強みになることは、今も昔も、そしてどんな立場で働くとしても、変わりません。また、利用者の立場に視点を変えてみると、シソーラスや索引に関する質問をすれば、その司書が役に立つかどうかをある程度判断できるのではないかとも考えられます。置かれている状況がままならなくても、研鑽し続ける司書はいます。そのような司書は、結構みなさんの近くにいて、質問される機会を待っているかもしれません。
もちろん、シソーラスや索引に関する知識は司書だけではなく、文献検索を行うすべての人に役立ちます。それをざっくりまとめてみたのがこちらです。
ということで、今回は、シソーラスの基本的な説明を、シソーラスを使わずにしてみたいと思います。
〈今回紹介したリソースは2019年7月14日にアクセス確認を行いました〉
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