地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2015年12月号 vol.1(10)

プラセボ効果というのはいわゆる「気のせい」なのでしょうか?

2015年11月24日 00:08 by 89089314
 メンタルヘルス領域の薬で最近のトピックスといえば、やはりオレキシン拮抗作用という全く新しい作用機序で登場したスボレキサントでしょうか。
 オレキシンというのは脳内で覚醒を司るホルモンの一種で、スボレキサントはオレキシンの作用を妨げる=覚醒を妨げる=睡眠導入作用を示すということから、睡眠薬として昨年登場したばかりの新しい薬です。
 先日、そのスボレキサントに関するメタアナリシスが報告されました。これはスボレキサントの効果について検証された主要な3つのランダム化比較試験を統合して解析したものです。
Kishi T, Matsunaga S, Iwata N. Suvorexant for Primary Insomnia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Placebo-Controlled Trials. PLoS One. 2015 Aug 28;10(8):e0136910. doi: 10.1371/journal.pone.0136910. eCollection 2015. PubMed PMID: 26317363; PubMed Central PMCID: PMC4552781.

 主要アウトカムとして評価されたのは、総睡眠時間と寝付くまでの時間です。それによると、スボレキサントで治療された人とプラセボで治療された人の差は、総睡眠時間で20.16分、寝付くまでの時間で7.62分の改善であったとのことです。
 さて、今見た数字は、スボレキサントで改善した時間とプラセボで改善した時間との差です。実際にはそれぞれどれぐらい総睡眠時間や寝付くまでの時間が改善しているのでしょうか。それはこの論文中で、研究に統合された3つのランダム化比較試験の結果の一つ一つが載っていますのでそれを見てみましょう。ざっと見た感じでは、総睡眠時間でスボレキサントは40分前後、プラセボでは20分前後改善しているようです。また、寝付くまでの時間でスボレキサントは20分前後、プラセボは10分前後の改善、といったところでしょうか。
 その効果の大きさが十分かどうかという議論は一旦脇へ置いといて、これを見て気付かれたでしょうか。プラセボ・・・つまり薬効のない偽薬を飲んでいるにもかかわらず、治療開始前と比べて睡眠状況は改善しているのです。これを「プラセボ(プラシーボ)効果」と呼ぶことがあります。
 ということは、臨床試験の場合は実薬に当たる可能性もプラセボに当たる可能性も予め被験者には示されていますが、それでも「これは睡眠薬かもしれない」という感じで飲まされた偽薬で不眠がこれだけ改善しているということなのです。すると、「プラセボを飲ませても不眠症は治療できるんじゃないのか?」という考えも浮かんできます。
 プラセボ効果ってのはただの気のせいなのでしょうか。それとも臨床の一定の条件下では確かに効果のあるものなのでしょうか。
 
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