こんにちは。デザイナーの川名です。医療分野を専門に扱っていて医薬品、医学書、医療施設、官公庁や教育機関などの仕事をしています。医療に関わる情報が的確・正確に伝わることに、グラフィックやウェブのデザインを通して携わっています。
情報の視覚化はステップバイステップで
梅雨が開けたと思ったら、すっかり真夏ですね。いや、これは真夏というより酷暑でしょうか。私が子供の頃には体験したことない暑さですので、くれぐれも体調管理に気をつけて、このしょうもない連載も涼しい部屋で、寝転んでご覧ください。
ところで、この文章を入力しているまさに今、我が家のベランダに、ハトがやってきております。春を過ぎると、だいたい番(つがい)でやってきますね。
ホーッホ―ッとか言ってます。おそらく新居を物色にきた新婚さんなのでしょう。
「あら、この家なんかいいんじゃない?」
「ふむ。君と僕の新しい愛の巣としては、この室外機の裏なんて悪くないなあ」
なんて話してるんでしょうか。
ハトにはハトの事情があると思いますが、フン害に遭うこちらはいい迷惑です。ベランダに出て「シッシッ!」とやっておきましたよ。
ところで私が見た「ハトが二羽」は、どのように伝えることができると思いますか。私がテキストとして表した「ハトが二羽」は、皆さんに適切に理解していただけたでしょうか。
「ハトが二羽」にも視覚的な表現を盛り込んだら様々な段階があり、「情報の視覚化」として考えることができます。 それは発信者が「何を伝えたいのか」によって使い分けられます。
狭いスペースに、ただ文字で表現すればよいのか。大きなスペースにリアルなハトの写真を載せ、アイキャッチとしての強さを盛り込むことで、目立たせたいのか。
よりテキストや記号に近づけるのか、グラフィカルな表現や、いっそ写真にするのか。情報の精度はテキストとグラフィックの間で、揺れ動くのです。
ハトが二羽いる。
ただそれだけのことでも、見せ方は無限に異なって、さらに見た人が受け取る情報も、無限に変わってくるかもしれません。
Aで表された「ハトが二羽いる」は、ふぅんとしか思わないかもしれませんが、Dの写真を見ると「オスとメスで毛づくろいしているのかな?仲良さそうだな」と思う人もいるかもしれません。さらにBのピクトグラムだと機能的な印象を受けるかもしれません。あるいは、Cのイラストはフン害のイメージから程遠く、「ハトってかわいい」とちょっと親近感を抱く人もいるかもしれませんね。
A、B、C、Dそれぞれ受け手にとっての印象は変わってきます。ハトをAという印象で見た人は、ベランダからハトを追い出すのを躊躇わないかもしれませんが、ハトをDという印象で受け取った人は「なんだか微笑ましい」と感じて、ベランダから追い出すのを躊躇ってしまうかもしれません。
そこに「たった一つの客観的事実」があるのか、ちょっとわからなくなりますね。
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