医学の発展とインターネットの発達により、インターネット上には圧倒的な量の健康情報で溢れています。
COVID-19の大流行が始まった時は特にデマも含めてたくさんの情報が溢れかえっていましたし、情報の急激な拡散を意味する「インフォデミック」という言葉も注目されましたね。
世界中の多くの人が病院に行く前にまずインターネットで健康情報を検索しており、日本も例外ではありません。
分かりやすいデータとして、厚生労働省が発表した健康意識に関する調査[1]があります。
この調査は、健康に関する意識の男女間・世代間・地域間の傾向を捉え、厚生労働白書及び今後の制度検討の基礎資料として活用することを目的として実施しており、株式会社楽天リサーチに登録しているモニターから、居住地毎に割付を行い、その内訳については各ブロック毎の性別、年齢区分別の構成比に応じた割付をした上で、計5,000名の回答依頼を実施しました。
文献[1]より引用
調査では様々な項目について調べているのですが、ここでは健康情報に関連する結果を抜粋し、以下にまとめました。
【健康に関する情報でよく接している媒体】・テレビとラジオ:77.5%・インターネット:74.6%・新聞:60.7%【健康の情報源として「非常に信用している」という回答が多いもの】・かかりつけ医:20.4%・大学や病院、診療所:12.2%【「まあ信用している」も含めた場合に多い回答】・テレビ・ラジオ:70.5%・新聞:76.2%・インターネット:55.6%【「あまり信用していない」「全く信用していない」という回答が多いもの】・広告・チラシ:83.3%・友人・口コミ:58.5%
このように、テレビやラジオ、インターネットで健康情報に接している人が7割を超えており、広告・チラシはほとんど信用されていないもののテレビやインターネットの情報はそれなりに信用されているということが分かります。
「セカンドオピニオンとしての医師とファーストオピニオンとしてのインターネット」というタイトルの論文[2]もあります。
その他の報告[3]でも、患者は「どこの組織の情報なら正しいのだろうか」「この情報は最新のものだろうか」「専門家としての考えばかりではなくで自分と同じような患者の意見はないのか」等と、インターネット上の健康情報を見て様々な考えを巡らせていることが分かっています。
ただその一方で、インターネットの健康情報によって自己診断や自己治療など患者の健康にとって有害な結果に繋がりうると医師は考えているという報告[4]もあります。
健康番組で「ヨーグルトが糖尿病に効く!」という特集の後は糖尿病患者の血糖値が軒並み上がっていたりしますし、医療従事者ですら「納豆は身体に良い」「乳酸菌は身体に良い」「オリーブオイルは身体に良い」と無批判に信じているという人もいます。
今の時代、5秒あれば何かについて知ることが出来ますが、それはメリットである一方で諸刃の剣でもありますね。
以前、「スマホがあれば受験なんて簡単」という話がSNSで話題になっていました。
そんなふうに、多くの人がGoogleで健康情報を検索している状況からか「Dr. Google」という言葉が論文のタイトルに使われていたりします[5][6]。
様々な情報が錯綜している現状では「ヘルスリテラシー」が非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
本稿ではヘルスリテラシーによる影響やインターネット上の医療情報の質、そして医療職や看護職が果たすことの出来る役割についてエビデンスを交えて考えをまとめていきたいと思います、
【目次】
・ヘルスリテラシーにはどんな影響がある?
・そもそもヘルシリテラシーって?
・日本 vs アメリカ:健康情報の質が高いのは?
【参考文献】
[1]厚生労働省 - 健康意識に関する調査 (2020年5月4日にアクセス)
[3]Quintana Y, Feightner JW, Wathen CN, Sangster LM, Marshall JN. Preventive health information on the Internet. Qualitative study of consumers' perspectives. Can Fam Physician. 2001;47:1759‐1765. [PMID:11570301]
[4]Ahmad F, Hudak PL, Bercovitz K, Hollenberg E, Levinson W. Are physicians ready for patients with Internet-based health information?. J Med Internet Res. 2006;8(3):e22. Published 2006 Sep 29.[PMID:17032638]
[5]Lee K, Hoti K, Hughes JD, Emmerton L. Dr Google Is Here to Stay but Health Care Professionals Are Still Valued: An Analysis of Health Care Consumers' Internet Navigation Support Preferences. J Med Internet Res. 2017;19(6):e210. Published 2017 Jun 14. doi:10.2196/jmir.7489 [PMID:28615156]
[6]Sood N, Jimenez DE, Pham TB, Cordrey K, Awadalla N, Milanaik R. Paging Dr. Google: The Effect of Online Health Information on Trust in Pediatricians' Diagnoses. Clin Pediatr (Phila). 2019;58(8):889‐896. doi:10.1177/0009922819845163 [PMID:31043059]
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