読者の皆さんもご存知のように、京都でALSを患う女性の「死にたい」という希望を受けて、ネットで知り合った2人の医師が女性を殺害するという、衝撃的な事件が7月に発覚しました。
私は、医師による行為というよりも、たまたま医師だったために手段を持ちえたというだけで、ゆがんだ考えを持った浅慮かつ愚かな人による嘱託殺人事件に過ぎず、これまで日本で医師による「安楽死」とされてきた事件とは全くの別物のように思いますが、皆さんはいかがでしょうか。
何より気掛かりなのは、事件のあまりの衝撃に心を揺さぶられるままに、素朴な善意の人たちが短絡的に「本人が死にたいと言っているのだから、死なせてあげよう」と声高に発言してしまっていることです。そこに政治的な思惑を載せた発言が絡まり合って、勢いのある空気感が醸し出されていくことが気がかりです。素朴な善意の人たちに向けて「これはもっと複雑な問題。ただの『感想』を『意見』とカン違いせず、自分の『意見』をきちんと模索するためには、その厄介な複雑さにまずは目を向け、知ることから始めませんか」と問いかけたくてなりません。
そんな思いも込めて、3月号以来となる、このシリーズを。
ほぼ半年の間にブックマークしていた関連記事を遡って読んでみると、大きなニュースを拾い漏らしていたことの発見に加えて、興味深い続報も多く、またホロコーストゆえにジレンマを抱えるドイツや、カトリックの国として名高いポルトガルとスペイン、イタリアでも新たな動きが見られます。
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