今月号は企画特集「ノセボとプラセボ」をお送りいたしました。
注目されているトピックということもあり、記者からたくさんの記事をご寄稿いただきました。おかげさまで、本誌創刊以来最も多くの記事を掲載することができました。ありがとうございます。
これらの記事が読者のみなさまにもしっかり届き、思索を深めることにつながればと期待しております。
あたらしい現実主義
最近話題になっているとのことで手にした本 Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章(ルトガー・ブレグマン 著)。
この第一章「あたらしい現実主義」では、
ほとんどの人は本質的にかなり善良だ
という主張が具体的事例とともに示されており、説得力があります。
この章のなかに「プラセボ効果とノセボ効果」という一節が登場します。
1999年、ベルギーの学校で起きたコカ・コーラ事件。コカ・コーラを飲んで深刻な症状を訴えた千人以上の児童から、原因といえる化学物質がひとつも見つからなかった事件を例に、著者はこのように述べています。
人は考えた通りの人になる。人は探しているものを見つける。予想したことは現実になる。
何を言おうとしているか、もうおわかりだろう。そう、人間についての厳しい見方も、ノセボの産物なのだ。
ほとんどの人が信用できない、とあなたが思うのであれば、互いに対してそのような態度を取り、誰もに不利益をもらたすだろう。他者をどう見るか、何よりも強力にこの世界を形作っていく。なぜなら、結局、人は予想した通りの結果を得るからだ。地球温暖化から、互いへの不信感の高まりまで、現代が抱える難問に立ち向かおうとするのであれば、人間の本性についての考え方を見直すところから始めるべきだろう。
そして、著者はひとつの逸話を紹介します。おじいさんとオオカミが出てきますが、赤ずきんではありません。インターネットで流布する作者不明の寓話とのことです。
おじいさんが孫の男の子に語ってきかせた。「わしの心の中には、オオカミが二匹住んでいる。この二匹はいつも激しく戦っている。一匹は悪いオオカミだ。短気で、欲張りで、嫉妬深く、傲慢で、臆病だ。もう一匹は善いオオカミだ。平和を好み、愛情深く、謙虚で、寛大で、正直で、信頼できる。この二匹は、おまえの心の中でも、ほかのすべての人の心の中でも戦っているのだよ。
孫は少し考えてから尋ねた。「どっちのオオカミが勝つの?」
老人は微笑んでこう答えた。
「それは、おまえが餌を与えた方だ」
人は本質的に善良なもの。
人は考えた通りの人になる。
これからはこういった「あたらしい現実主義」を前提とする社会に移行していくでしょう。
医療も「医療者が正しく、患者は正さなくてはならない」という潜在的なパターナリズムから脱却し、「あらたしい現実主義」へと転換が迫られるはずです。
「ノセボやプラセボ」は薬の効果が問われているのではなく、医療者の内面の変革が問われている。
そんな萌芽が感じられる、感慨深い企画特集となりました。
「小さな医療」
このたび、大規模なサービスリニューアルを予定しております。
情報発信とコミュニティを統合した新たな情報交流拠点(プラットフォーム)「小さな医療」を開設する予定です。
本誌記事は最新号から全文同時掲載させていただきます。さらに、
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を備え、情報発信から医療現場の支援まで一体となって展開できるよう、段階的にサービスを拡張させてまいります。
なお、以下の点を除き本誌運用に変更はございません。ひきつづきご利用いただけます。
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それでは、今月はこのあたりで。また来月、お会いできることを願っております。
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