地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2020年2月号 vol.6(2)

ライブラリアンによるないないづくしのEBM 第10回: 決めつけないで決めていく

2020年01月15日 23:14 by chebsat33

 

こんにちは。Independent Librarian(インディペンデント ライブラリアン) の chebsat33 です。

この連載では、主に “情報環境のあまり整っていない医療職がEBMを実践する際のヒントとなるようなリソースと活用のコツ” を紹介していく予定です。名付けて『ライブラリアンによるないないづくしのEBM』、略して『LiNE』としてみました。細く縒られた切れやすい糸のように拙い私の文章が、読んでくださる方たちのもとでそれぞれに綴られていき、いつか一枚の布のように何かの時にお役に立つものになったとしたらうれしいです。どうぞ、お付き合いくださいね。

さて。

第8回から、『Resources for Evidence-Based Practice: The 6S Pyramid(根拠に基づく臨床のためのリソース:6Sピラミッド)』の各階層に該当するリソースの例を紹介しています。ピラミッドの日本語訳や各階層の関係性については、「第7回: まとまりはどこから」を参照してください。

第10回では、個々の研究結果を統合したリソースをとりあげます。6Sピラミッドでは「Synopses of syntheses」「Syntheses」が該当します。

 

 

Synthesis:研究結果の統合

6Sピラミッドの「Synthesis」に該当するリソースの形式には、システマティックレビュー(Systematic Review, SR)やメタアナリシス(Meta Analysis, MA)が該当します。「Synopses of syntheses」は、SR/MAの梗概(あらまし、抄録など)です。SR/MAとは、特定の課題に関する研究を網羅的に集めて吟味し、客観的で公正な手法を用いて解析を行った研究のことで、診療ガイドライン(Clinical Practice Guideline, CPG)にも用いられています。ただし、CPGに記載されている内容のすべてがSRやMAで解析されているわけではありません。また、CPGの場合はSR/MAで解析されていたとしても、解析結果から臨床でどのように適用するのかを示す「推奨」を新たに作成することになりますから、CPGは必ずSR/MAが行われている・SR/MAの解析結果がそのまま採用されていると決めつけない方がよいでしょう。

Synthesisの役割

SR/MAの意義と役割については、以下の文献などで示されています。

Murad MH, Asi N, Alsawas M, Alahdab F.
New evidence pyramid.
Evid Based Med. 2016 Aug;21(4):125-7.
doi: 10.1136/ebmed-2016-110401.
PMID: 27339128; PMCID: PMC4975798.

この文献にはいわゆる「evidence pyramid(エビデンスのピラミッド)」に2度の変化を加える形で、SR/MAの役割を示した「The proposed new evidence-based medicine pyramid」の図があります。

 

この図については、2016年6月30日のU.S GRADE Network blogにカラー版が掲載されています。本記事でも以下よりカラー版を用います。

Proposed new evidence-based medicine pyramid.
U.S. GRADE Network blog. 2016 Jun 30.
https://usblog.gradeworkinggroup.org/2016/06/proposed-new-evidence-based-medicine.html

エビデンスのピラミッドとは、臨床研究における代表的な研究デザインを信頼度の順に並べて階層化したもので、EBMを学習する際にしばしば登場するものです。上記の文献では、Aの「Traditional Pyramid(伝統的なピラミッド)」として紹介されています。

エビデンスのピラミッドで最高峰に位置しているのがSR/MA、次に介入研究であるランダム化比較試験、その下に観察研究であるコホート研究・症例対照研究・症例集積研究・症例報告が続いています。ピラミッドによっては、下位に「Expert Opinion(専門家の見解)」「Animal Research(動物実験)」「In Vitro(試験管内研究)」などが続く場合もあります。SR/MAは、既に発表された研究結果を元に解析を行うので、二次研究とも呼ばれます。

Muradらは、エビデンスのピラミッドから二次研究であるSR/MAを切り離し、個々のエビデンスの信頼性は研究デザイン以外の要因によって変動するというGRADEThe Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation. ※日本支部は日本医療機能評価機構のMindsに「Minds Tokyo GRADE Center」の名称で設置)の考え方を表現するため、ピラミッドにある研究デザインの境界線を波状にしました。

MuradらがSR/MAをピラミッドから切り離したのは、SR/MAが最高に信頼できる研究デザインであるというよりも「SR/MAは他のデザインによる研究の信頼性や品質を見るための役割を持つ」と位置づけたからです。たとえば、バイアスのリスクの高い研究を統合したSR/MAと低い研究を統合したSR/MAがあった場合、このふたつを同じように扱うことは適切ではないでしょう。また、SR/MAは統合による解析と評価のプロセスが詳細に記載されるという特徴を持っています。Muradらは、それらを「SR/MAがエビデンスを見る(適用の)ためのレンズとなる」と表現しました。

これらのプロセスを3つのピラミッドでまとめたのが、最初の図となります。

 

 

それでは、臨床への適用のレンズとなる「Synthesis」を活用するためのリソースの例をご紹介します。

〈今回紹介したリソースは2020年1月10日までにアクセス確認しています〉

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